扉日記

doors diary

イマジネーション4

頭の中を壊します。目を閉じて。頭の中に爆発を起こします。「ドカーン」「ドカーン」。するとどうなるかやってみます。

そとは戦争をやっているような感じがしてきました。凄い音です。

今度は川の流れをイメージしてみます。外が急に穏やかになりました。木陰を歩きます。木の香り。

心が穏やかになります。そとはさらに静まってきました。空に浮いているような感覚です。木陰のわきの道を歩きます。とても天気が良いです。少し行くと道路に出ました。車がたくさん走っています。横断歩道があります。赤信号。少し待ってから車が途切れたので信号が青に変わる前に走って道路を渡ります。横断歩道を渡るとまた細い小道が続いています。右側に大きな木があります。椿だと思います。

少し行くとせまい交差点に入ります。お父さんが小さい男の子を肩車しています。後ろからお兄ちゃんがついていきます。「こんにちは。」裏通りの小道です。車も通ります。一台がぎりぎりすれ違えるくらいの細い道路右に曲がってみます。遠くに町が見えます。小高い丘の上だったようです。ヨーロッパのような街並みです。街の中心には教会のような大きな建物があります。丘を下っていくと町まで行けそうです。さっきまでは日本だと思っていたのだけど日本じゃないみたいです。日本とヨーロッパが混じったような街です。車の40と書いてある標識は日本のものです。でも遠くから歩いてきたおじいさんは背の高い外国人のようです。身なりはよく、帽子をかぶり、風貌は優しそうですが、威厳があります。こちらを向いて会釈してくれました。こちらも会釈を返します。少し気分が良くなりました。心地よい太陽の光を感じます。結構下って行かなければならないようです。街の中心まではけっこうあります。バスで行こうかと思います。少し先にバス停があります。時刻表を見てみます。次のバスは9:53もう2分くらい待ったらバスが来そうです。向かいの家の後ろは森になっています。空と森の木の境の一番高いところを見つめています。

子供のころに、おじいちゃんがたまに遠くの景色を見ないと目が悪くなるからと一緒に少し遠くに見える山の木のてっぺんを3分間じっとみつめるのをやらされていたことがあるので癖になっているようです。おかげであまり目が悪くならなかったのかもしれないです。

おじいちゃんの言うことはいつも正しかったように思います。

向こうの通りを若い女の人がふたりで話しながら歩いています。手前の女の人は肩から高そうなブランドものの小さなバッグをかけていて、白いニットにベージュのスカート、茶色と赤のハイヒールを履いています。黒髪のショートヘアで、ぼくの好みのタイプだと思いましたが顔は見えません。奥の方の女の人はロングヘアで、紺のジャケットとスカート、水色のシャツにスカーフを首に巻いていてとても上品に見えます。分厚い外国の本と紙袋に入ったフランスパンを持っています。顔立ちはキリッとしていて、とても賢そうで美人だと思いました。たぶん20半ばかと思います。美人な人は美人といることが多いので、手前の女の人も顔は見えませんがおそらく美人だろうと思いました。どちらの女性もとても品が良い感じがしました。

自分は女の人をよく観察しているのだなと思いました。

向こうからバスがやってきました。古いけれど赤くて丸みのあるかわいらしいバスです。消防車みたいだと思いました。バスに乗り込むと結構たくさん人が乗っていて、空いている席を探し、一番奥から二番目の一人掛けの席が空いていたのでそこに座りました。久しぶりにバスの乗るので少しワクワクしました。バスが走りだしました。少し行くと左手にきれいな公園と池があり、親子連れが遊んでいます。子供たちはボール遊びやフラフープをやっています。

少し行くと、なんだか急にビルが多くなってきました。都会的なトンネルに入ります。ここは高速道路のようです。高級車がたくさん走っています。みんな結構スピードを出して走っています。バスも大きなエンジン音を響かせながら周りに合わせてスピードを上げています。バスは結構無理しているような感じでこんなにスピードを出して大丈夫なの?と思いました。周りの人たちは慣れているのか、みんなどこかをずっと見つめながら黙って座って乗っています。やや年配の人たちが多いです。

若いビジネスマン風の男性が中央のあたりに立っています。

前のほうには先ほどバスに乗る前に見かけた若い女性が着ていたような白いニットの女性がいるだけで、あとはみんなお年寄りという感じです。

窓の外を走る周りの車はみんな立派で新しく、このバスだけがとても古い車なので、なんだか未来に来たような、バスだけが過去に置いて行かれたような不思議な感覚に陥りました。

トンネルを抜けるとバスの外には歩いているたくさんの人が見えます。画集か何かで見たようなフランスの風景画のような景色だと思いました。

きれいな街並みをずっと行くと右上のほうに、遠くから見えた大きな教会のような建物が顔をのぞかせていました。その教会のまえは広場になっていて、古いバスは広場の奥のバスターミナルに入っていきました。

みんなここで降りるみたいです。後ろの方の席に座っていたので、みんなが降りていくのを待ってから、一番最後に席を立って、80代くらいのおばあさんの後ろをついていきました。料金表を眺めると260とありました。おばあさんがお金を払うのを待ってから、右側のポケットから小銭を取り出して260円を払って、運転手さんに「ありがとうございました。」というと、運転手さんも「ありがとございます。」と返してくれました。

景色はヨーロッパ風なのにいろんなところが日本の感じです。

「外国風の街並みなのに、お金も言葉も日本語でいいのかな?」と思い少し戸惑いましたが、あまり気にしないことにしました。

大体ここがどこなのかも、ここへ自分は何をしに来たのかも、実はあんまりよく分かっていないのでした。

とにかく、あの大きな教会のような建物のところまで行ってみようと思ってここまで来てみただけなのです。

ただここがどんなところなのか見てみたかった。

ただそれだけだったので、ここまで来てみると次は何をしたらよいのかわからなくなりました。広場の少し先にあの教会のような建物があるので、そこまで歩いて行ってみようと思いました。

日本人や外国人がたくさんいます。日本人も外国人もみんなここで暮らしているような感じです。

観光客というかここに初めて来たのは僕だけのように感じ、少し孤独だと思いました。

建物の入り口のところまでくると、大きな木の扉は閉まっていて、CLOSDと書いてありました。今日は休館日のようでした。

「今日は何曜日なんだろう?」と思いました。

少し休もうかと思ったので、広場のほうを見渡すと右側のほうにカフェがあるのを見つけました。

「あそこにいって何か飲もう」と思いました。

アイスコーヒーが飲みたいけれど、たぶんそんなに美味しくないだろうなと思いました。

解放感のあるお店で、奥にバーカウンターがあり、年配の外国人の男性がカウンターに立っていました。言葉は通じるのかな?と思いましたがメニューは英語と日本語でも書かれてありました。

店内に入ると何となくコーヒーが美味しそうな雰囲気がありました。

アイスコーヒーを飲みたかったので、「C'e un Caffe' freddo?」と注文してみました。

ここはイタリアなのかなと思ったけれど、ハンドドリップで淹れてくれるみたいだったのでイタリアでもないようでした。

おすすめはケニアのコーヒーだというので、それをハンドドリップで淹れてもらうことにしました。ハリオのV60で下に氷を淹れて急冷するみたいでした。

カウンターの奥には見たことのないスタイリッシュなエスプレッソマシンが置かれていたので、マシンのことを聞きたかったのですが、あまり言葉が通じないのではないかと思い、そのことを聞くのはやめてドリップの淹れ方を見ることにしました。

マシンのことはあとでネットで調べようと思いました。あんなマシンがあることをぼくが知らないわけがないんだけどと思いながら、

年配のバリスタは何か話しながらコーヒーを淹れてくれています。

おそらく「こうすることでコーヒーの味の特徴がより引き出せる」という感じのことを外国語で話しているような感じでした。

言葉は何語かよくわからなかったのですが、なんとなく言いたいことは伝わってきたので、うなずいて「なるほど」という感じの顔をしました。

たぶん伝えたかったのは木のへら粉をかき混ぜることのコツのようなことでした。縦横に2回ずつ十字を切るようにかき混ぜる事がポイントのようでした。理由はよくわかりませんが、「そうやると美味しくなるのね」と思いました。

コーヒーをグラスに移して出してくれました。お金は450掛かるみたいでした。何の通貨かはわかりませんが、僕のポケットに入っている小銭が使えるようでしたので、ポケットから小銭を取り出し、そのバリスタに500円コインのようなお金を渡すと、穴の開いた50円玉のようなお釣りを返してくれました。カウンターにチップボックスがあったのでそのお釣りをチップボックスに入れると年配のバリスタは「Grazie!」と小さな声でいいながら笑んでくれました。

ケニアのアイスコーヒーを受け取ると、僕は外のテラス席に座り、コーヒーを飲みました。フルーティだけど思ったよりもバランスが良く、主張が強すぎないとても飲みやすいコーヒーでした。

おいしそうだと思っていたけれど、飲んでみるとぼくの想像以上に美味しかったので少し驚きました。

味の理由を考えました。豆自体のクオリティがとても高いのだことは感じ取ることができました。ローストもきちんと素材を活かす為の焼き方がされてあるように思いましたし、それに対しての淹れ方も的確に、きちんと考えられて淹れてくれていたように感じられたので、とにかくこのお店が全体としてとてもクオリティの高いお店なのだということが分かりました。

「なんでこんなところに、こんなに美味しいコーヒーの出せるお店があるのだろう」と思いました。

周りのひとを見渡してみると、お客さんはピンク色のブルーベリーの入ったスムージーや赤いオレンジジュース、ジンジャーエールのような飲み物などを飲みながら、トマトとベーコンにバジルの葉っぱが乗ってあるパスタを食べている人が結構いました。ここはパスタも美味しいお店なのかな?と思いましたが、コーヒーを飲んでいる人を探したけれどいなかったので少し残念な気持ちになりました。

「どうしてこんなに美味しいコーヒーに誰も興味を持たないのだろう?」

ここのコーヒーすごく美味しいから一度飲んでみたほうがいいよってみんなに教えてあげようと思いました。

そういえばここのお店の名前なんていうんだろう?

探してみるとテラス席の日除けの上に「CAFFE CALIFORNIA」と書いてありました。

なんかおもしろい。

あんまりカリフォルニアって感じがしなかったけど、そういえば店の中の壁にサーフィンをしている人の白黒の写真が掛けてあったことを思い出して、「もしかしたらあの年配のバリスタの若いころの写真かも。昔カリフォルニアにいたのかな?」と思いながら広場のほうへ向かってまた歩きながら、次は何をしようかと考えてみました。

色々考えているうちにだんだん家に帰りたくなってきました。「それで、ぼくの家はどこなんだろう?」と思い、少し不安になりました。僕はどこに帰ればよいのかわからなくなってしまいました。

どこに行ったらよいのかも、どこに帰ったらよいのかもわからない。困った。

広場の真ん中のあたりで立ちながらどうしようと思っていると、こちらに向かって誰かが歩いてくるのが見えました。彼女のことを僕は知っている人のように思いました。そして見覚えのあるファッション。彼女がぼくの前まで来ると「ごめん。遅くなっちゃった。待たせたでしょ。」と言いました。

「あっ、バスに乗る前に二人で歩いていた手前側の女の子。」と心のなかで思いましたが、それは言ってはいけないような気がしました。

「ううん。あそこのカフェでコーヒー飲んでたから大丈夫。」とぼく。

「コーヒーがすごく美味しかった。あのお店すごくよかったよ。トマトのパスタもおいしそうだったし。おなかは空いてる?」

「うん。少し食べたい。」

「じゃあ。あのお店でパスタでも食べる?」

「うん。いいね。でもまたさっきと同じとこでいいの?」

「うん。いいよ。」

さっきまではどこに帰ればよいのかよくわからなかったので、

またすぐに帰る場所ができて、すこし安心した気持ちになりました。

それに彼女のおかげで家にも帰れそうな気がしました。

「じゃあ。パスタ食べながらどこに行こうか考えよう。」

これから行くところもたぶん決まりそうで、帰る場所も分かりそうでした。

なんか今日はすごくよい日だと思いました。